WHY NEWS LITERACY MATTERS
吉田まゆ経歴
[THE CHOICE Accelerator]
慶應義塾大学総合政策学部卒。世界最大級のニュース通信社のテレビ特派員(キャスター・記者・プロデューサー)として世界中のテレビ局に日本のニュースを英語で配信中。同社東京支局のテレビ特派員としては最年少で現職に就き、金融ビジネスニュースを中心にカルチャー・テック・震災など多岐に渡る報道に携わる。
ジャーナリズムを目指したきっかけは子供の頃生中継で見た911テロ事件。CNN/BBC/NHKをチャンネルサーフィンしている時に「海外の報道の生々しさ」に衝撃を受け、当時はまだ稀有だった海外テレビ局のアジア人特派員・アンカーを目指しはじめる。
大学卒業後、共同通信社で英文記者(新聞記者)として入社。
金融マーケット担当の傍ら様々な取材に携わりジャーナリズムの基礎を学ぶ。新人記者時代に発生した東日本大震災でマルチメディア記者としてカメラ片手に被災地取材に尽力するうちに映像ニュースに進みたいと改めて決心。NHK国際や民放国際部でプロデューサーを経て、NHKWorldのビジネスリポーター兼アンカー代理としてテレビデビュー。
プライベートではスキーとダンスと美味しいご飯とお酒とが大好き。2児の母として育児と報道の両立に奮闘中。
突然ですが、みなさん【ニュースリテラシー】をご存知ですか? 昨今の新型コロナウィルスによる緊急非常事態においては、特に重要なソフトスキルだと考えています。今回、そのニュースリテラシーとは何なのか? また、そのうえで、重要な情報を漏らさずに収集するためのコツをシェアいたします。国際報道に携わって10年、私自身、常にファクトにこだわり報道してきました。皆さんが、正確な情報と必要な情報を取捨選択できるお手伝いができればと願っております。
■ニュースリテラシーとは?
News Literacy教育に10年以上取り組んでいるStony Brook Univは下記の様に位置付けています。
【The ability to judge the credibility and reliability of news reports–and why that matters to them. 】
信頼できて信憑性のあるニュースを見極められる判断力、そしてそれが何故自分たちの生活に重要なのかを理解できる能力‥とでも訳しましょうか。
簡単に言うと、【フェイクニュースやデマに踊らされないリテラシー】です。
今回の新型コロナウィルスのみならず、災害等のクライシスの際、必ずと言っていいほどデマが出回ります。そうした間違った情報を鵜呑みにし、悪意が無くとも、場合によっては拡散してしまう。
これは恥ずかしいことではなく、社会的ステータスの高い人、知識レベルの高い人も安易に騙されることがあります(デマ拡散の仕組みについては別の投稿で書きます)。
■ニュースリテラシーはどうすれば向上できるのか
これを知れば解決! というウルトラCはなく、虫歯予防のようにコツコツ鍛えるしかないというのが、率直な答えです。ただ、その中でも、コツを掴めば日々の正しい情報の取捨選択がしやすくなると考えます。
そのために必要なのは下記だと私は考えています。
ニュースの制作過程を知ること
複数のソースを比べること
News と Opinionの違いを知ること
発信者が誰なのかチェックすること
特に最後が一番大事です。
■「マスコミは伝えない」の誤解
このような災害時に必ずネットを駆け巡る言葉「マスコミは伝えない」の誤解についてお伝えします。
コロナウィルスへの危機感がじわじわ高まっていた頃、とあるFBの投稿に目が止まりました。
ある医療従事者が医療崩壊寸前の現場の現状を訴える内容でしたが、(発信元が実名だったので信用できる投稿だと判断)、その中にあった「マスコミはこの現状を伝えていません」という一文にも私は心を痛めていました。
なぜか?実際に報道はあったからです。
かなり早い段階から、専門家インタビューの新聞記事や医師会の会見等で、医療崩壊の可能性は報じられていました。しかし、皆さんの多くはきっと、そんなことない 未だにそんなに報道されていないじゃないか、と感じられるのではないでしょうか?
それはなぜなのか。
クライシスな時ほど
視聴者の期待するニュース
メディアが実際に取材できるニュース
にギャップが生じるからです。記者は自ら取材してウラがとれた(真偽の確認がとれている)内容しか報道しません。もちろんそうでない内容は報道できません。災害時は尚更、報道内容に神経質になります。人の命や生活に支障をきたす可能性があるからです。
一方、視聴者が「医療崩壊」と聞いてパッと浮かぶのは、怒号の飛び交う病室、防護服に身を固めた医師や看護士、ひっきりなしにやってくる急患、ピーとなり続けるモニター‥が写っているテレビニュースではないでしょうか。
しかし、医療崩壊寸前で人手不足の状態なのに、メディア取材を受け入れる病院は、この状況で恐らくどこにもありません。ましてや、日本のテレビクルーは複数人でやってきます。病院広報担当を確保し、彼らの感染対策まで見張って対応してくれる新型コロナ対応病院はきっと今どこにもいません。
つまり、「マスコミはこの現状を伝えていません」の裏側は、取材される側のキャパと、取材できないことは報道できないメディアのギャップにあるのです。
このギャップは今回のパンデミックに限りません
人権問題、社会問題、大震災etc
シリアスになればなるほど、テレビがカメラ取材に入るのは困難なのです
■正しい情報を漏らさずに得るには
個人的な見解ですが、
災害時こそ視覚的に迫力のあるニュースにこだわらないでほしい
注視すべきは下記2つ
○記者会見
○新聞記事(今の時代ネットに新聞記事は掲載されています)
今回のCOVID19に関連付けると、
○記者会見=ビジュアル的な迫力や臨場感はないが、医師会が病院を混乱させずに医療崩壊について随時アップデートするのに最適な場。
○新聞記事=現場に記者が向かわずとも電話取材ができるので、専門家のインタビュー記事が報道される。
マスコミと一言で言っても、テレビだけではありません。新聞、通信社、雑誌、ラジオ‥それぞれの媒体に一流の記者がいます。是非クライシスの際こそ、落ち着いて、記者会見や新聞記事にいつも以上に注目してみてください